坂田金時(さかたのきんとき)は、昔話の「金太郎」として知られる人物です。
まさかりをかついで熊と相撲をとる元気な子どもの姿が有名ですが、実は平安時代に実在した武将でもありました。
本記事では、坂田金時がどんな人で、何をしたのかを、子どもにもわかるようにやさしく解説します。歴史と伝説の両方から“金太郎”の魅力を見ていきましょう!
坂田金時とはどんな人?
金太郎として有名な坂田金時の正体
坂田金時(さかたのきんとき)は、昔話に登場する「金太郎」が大人になった姿として語り継がれている人物です。
足柄山で熊と相撲を取るほど力持ちだったという物語が広く知られていますが、伝承では後に「坂田公時(さかたのきんとき/こうじ)」と名乗り、京に上って武士として活躍したとされています。
実在性については諸説があり、近世以降の文芸や信仰の中で金太郎像が大きくふくらんだ面もあります。
一方で、神奈川県南足柄市や静岡県小山町、箱根周辺には生家跡や神社、山の名に至るまで多くの「金太郎ゆかり」が残り、地域の文化として現在まで大切に語り継がれています。
平安時代の武将としての坂田金時
伝承や事典類では、坂田金時は平安中期の武将で、源頼光(みなもとのよりみつ/頼光)に仕えた家臣団「頼光四天王」の一人と説明されます。
四天王には渡辺綱・卜部季武・碓井(碓氷)貞光が名を連ね、都やその周辺で人々を脅かした鬼や怪異を退治する物語にしばしば登場します。
中でも大江山の酒呑童子退治は、頼光と四天王の代表的な活躍談として多くの史料・絵画に描かれてきました。
坂田金時の生没年や具体的な事績は明確ではありませんが、金太郎の幼名とあわせて「怪力無双で正義感の強い武士」というイメージが確立し、箱根の金時山や公時神社、南足柄の伝説地など、各地の地名・祭礼・文化財にその名が受け継がれています。
坂田金時は何をした人?
源頼光の家来として活躍
坂田金時は、平安時代中期の武将・源頼光に仕えた家来として語られています。
物語や絵巻では、都の治安を守る頼光のもとで、怪異に立ち向かう力自慢の勇士として描かれます。
頼光のもとには腕ききの家来が集まり、その中心となった四人は「頼光四天王」と呼ばれました。
四天王は渡辺綱、卜部季武、碓井貞光、そして坂田金時で、金時は幼名の「金太郎」で知られる人物とされています。
金時はまさかりを得物に、勇気とやさしさをあわせ持つ武士として活躍したと語られています。
酒呑童子退治での功績
坂田金時の代表的な活躍は、大江山にすむ鬼の頭領・酒呑童子(しゅてんどうじ)を討伐した物語です。
天皇の命を受けた頼光が四天王や藤原保昌とともに山伏に姿を変えて鬼の本拠へ向かい、酒で鬼たちを酔わせて討ち取ったとされます。
この物語は多くの絵画や能・謡曲で伝えられ、討伐に使われた名刀として、東京国立博物館に伝わる国宝「童子切安綱」が有名です。
文化庁の文化財データベースでも「童子切安綱」は国宝として登録され、酒呑童子討伐の伝承で知られる刀剣と説明されています。
四天王の一人として知られる理由
坂田金時が「四天王」の一人として広く知られるのは、頼光の配下四名の組み合わせが多くの説話や美術作品でくり返し語られてきたからです。
酒呑童子や土蜘蛛退治などの物語群で四人がそろって活躍する場面が定着し、金時=金太郎の成長した姿というつながりも相まって、勇敢で頼れるヒーロー像が強く残りました。
これらの伝承は中世以降の絵巻や御伽草子、近世の浮世絵などでも人気を集め、現在では博物館や自治体の資料でもその活躍が紹介されています。
坂田金時と金太郎の違いとは?
伝説と史実の違いをわかりやすく解説
まず、「坂田金時」と「金太郎」の呼び名について整理します。
金太郎は、足柄山でクマと相撲を取ったり大木を引き抜いたりと、力持ちで親しみやすい少年の姿で昔話になったキャラクターです。
一方で、坂田金時は平安時代中期に伝わる武将・公時(こうじ)とも称され、都に上って武士として活躍したという伝承が残っており、幼名として金太郎が伝わるケースが多いです。
伝説の金太郎は物語性・象徴性が重視され、動物と遊ぶ怪力の少年という“イメージ”として語られます。
これに対し、坂田金時は伝承の武将として「四天王」の一人という歴史的・軍記的な側面が強調されており、実在の武士であった可能性も論じられています。
つまり、金太郎=昔話のヒーロー、坂田金時=その後の成長・出世版という位置づけが一般的です。
なぜ金太郎が坂田金時の幼名とされるのか
金太郎が坂田金時の幼名とされる背景には、地域伝承や時代を経た脚色が影響しています。
伝説では、相模国(現在の神奈川県・静岡県の足柄山周辺)で熊や動物と戯れた少年が、後に都に上って「坂田公時」と名乗り武士として活躍したという筋書きが数多く語られています。
この物語が庶民に親しまれたのち、幼少期の「金太郎」のイメージと、武士としての「坂田金時」という成人期の姿を結びつけた構図が定着しました。
また「幼名金太郎」と明記しているものもあり、坂田金時=金太郎という理解が一般的です。
ただし、これはあくまで伝承・昔話に基づく解釈であって、史実として「この少年が確実に坂田金時になった」という証拠があるわけではありません。
歴史学や民俗学の見地からは、「金太郎伝説」と「坂田金時伝承」が重なった形で今日の姿になったとする見方もあります。
坂田金時にまつわる豆知識
金時山・金時飴など名前が残る理由
坂田金時は、今でも日本各地にその名を残しています。
中でも有名なのが「金時山(きんときやま)」です。
神奈川県南足柄市と静岡県小山町の境にあるこの山は、金太郎が幼少期を過ごしたとされる足柄山の一部で、山頂には「金時神社(公時神社)」がまつられています。
ここでは毎年五月の「金太郎祭り」が開かれ、子どもたちがまさかりを担いだ金太郎の姿で練り歩く行事が行われています。
また、「金時飴(きんときあめ)」や「金時豆」などの食品にも坂田金時の名前が残っています。
これらは“力強く元気な子ども”という金太郎のイメージにあやかって名づけられたといわれ、子どもの健康や成長を願う縁起物として親しまれています。
さらに、箱根エリアでは「金時湯」「金時草」などの名も残り、地元文化の中で金太郎伝説が生き続けています。
昔話「金太郎」の中のメッセージとは?
昔話『金太郎』には、ただの力自慢ではなく「自然と共に生きる強さとやさしさ」というメッセージが込められています。
金太郎は山の動物たちと仲良く暮らし、正しいことを恐れずに行う少年として描かれます。
その純粋さや正義感が評価され、のちに源頼光に見出されて都で武士となるという展開は、「努力と誠実さが報われる」という教訓としても読まれます。
現代でも金太郎は「こどもの日」や「五月人形」のモチーフとして人気があり、健康で強く優しい子どもに育ってほしいという願いの象徴とされています。
つまり、坂田金時の伝説は単なる昔話ではなく、日本人が大切にしてきた価値観を伝える文化遺産でもあるのです。
坂田金時の年表
以下の年表は、伝説・史実の双方をもとに「坂田金時(さかたのきんとき/金太郎)」の伝わる主な出来事を時系列で整理したものです。
実際の記録に基づく確証は薄いため、その点はご注意ください。
| 年(西暦) | 出来事 |
|---|---|
| 956年 | 坂田金時の生年(皇紀1616年)と伝えられている。平安時代中期の武将という伝承に基づく。 |
| 幼少期 | 足柄山(神奈川県南足柄市・静岡県小山町あたり)で、熊と相撲をするなど怪力を発揮した「金太郎」としての伝説が語り継がれる。 |
| 21歳ごろ(伝承) | 都(京)に上り、源頼光に仕えて「頼光四天王」の一員となったという伝説。 |
| 1012年 | 没年として伝えられている寛弘8年(皇紀1672年)12月15日、享年57とされる。 |
以上が、「坂田金時」に関して伝わる主な年表です。なお、史料上の記録は限定的で、時代・地域・典拠によって内容や年次が異なる点もあります。
まとめ|坂田金時は強くて優しい平安時代のヒーロー
歴史と伝説、両方で語り継がれる理由
坂田金時は、実在したとされる平安時代の武士でありながら、昔話の「金太郎」としても愛される特別な存在です。
彼は源頼光の家来として勇敢に鬼退治を行い、一方で山の動物たちと仲良く暮らした心優しい少年としても描かれます。
つまり、坂田金時は「力」と「優しさ」を兼ね備えた理想のヒーロー像として、歴史と伝説の両方から語り継がれてきたのです。
各地の神社や山、祭りなどにその名が残っているのも、多くの人々が今なお彼を敬い、親しんできた証拠といえるでしょう。
子どもたちに人気の“金太郎”としての魅力
金太郎は、現代でも子どもの成長を願う象徴として親しまれています。
こどもの日には金太郎を模した五月人形や掛け軸が飾られ、「元気でやさしい子に育ってほしい」という願いが込められています。
物語の中の金太郎は、正義感が強く、仲間思いで、自然を大切にする少年です。
その姿は、現代社会においても「思いやりと勇気を持つことの大切さ」を教えてくれます。
坂田金時の伝説が長い時を超えて語り継がれているのは、まさにこの普遍的な人間らしさと、子どもたちが憧れるヒーロー像が重なっているからです。
坂田金時は、歴史と昔話の中で「力強さ」と「やさしさ」を両立した日本的ヒーローとして、これからも語り継がれていくでしょう。
もし足柄山や金時山を訪れる機会があれば、金太郎伝説の舞台を歩きながら、その魅力を感じてみてください。
出典情報:Wikipedia、コトバンク、金太郎のふる里 | 南足柄市、勝央町公式サイト「金太郎こと坂田金時伝説」、小田原市「浮世絵で見る金太郎」

